ナンピン・マーチンEAは、勝率90%以上で右肩上がりの資産曲線が並ぶので、一度は試してみたくなります。
結論からいうと、危険です。初期0.01ロット・20pips間隔で倍々にナンピンするEAは、100万円の口座でも約230pipsの一方的な逆行で資金の大半を失います。レバレッジ1,000倍の海外口座で試算した結果です。
ドル円は2024年7月から8月の約1か月で約20円、2,000pips下落したことがあります。
以下では、何段・何pipsで破綻するかを再現できる計算で示し、それでも稼働させる場合の最大ポジション数と証拠金維持率の決め方までまとめます。
ナンピン・マーチン・両建とは?
ナンピンマーチンEAとは、含み損が出るたびに同じ方向へポジションを追加し、そのロットを2倍、4倍と増やしていく自動売買プログラムです。3つの手法の違いは次のとおりです。
3つの手法の違い
ナンピンマーチンEAの取引の流れを図にすると、次のとおりです。逆行するたびにロットを倍にしたポジションを追加し、反転したところでまとめて利益確定します。
ナンピン・マーチンEAのタイプ別リスク
ナンピン・マーチンEAのリスクは、ポジションを何段まで追加し、最後に損切りするかどうかでほぼ決まります。
ここからは、表の「無限ナンピン型」と、10段前後まで重ねる「段数制限型」をナンピン・マーチンEAとして話を進めます。
資産曲線が右肩上がりに見える理由
ナンピン・マーチンEAの資産曲線は、ほぼ右肩上がりの直線になり、途中に凹または凸のような線ができます。緑の線(ロット数)が青線の凹凸のところで大きくなっています。

- 凹凸の箇所:追加でポジションを持ち、含み損を抱えている期間
- 緑の線が跳ねる箇所:ロットが倍々に膨らんでいる
- 勝率:損切りを延命するため、90%以上や100%近くになる
すごく儲かりそうに見えますが、この右肩上がりは、含み損を抱えたらポジションを追加して損切りを延命しているだけです。損切りを延命すれば勝率100%も夢ではありません。
勝率が上がる仕組みは、平均取得単価を計算すると見えてきます。150.00円で0.01ロット、149.80円で0.02ロット、149.60円で0.04ロットを買った場合です。
平均取得単価は(150.00×1+149.80×2+149.60×4)÷7=約149.714円です。最後の買値149.60円から約11.4pips戻るだけで、40pips逆行した3つのポジションがまとめて建値に戻ります。
ナンピン・マーチンEAが危険な理由
資産曲線がきれいなので稼げそうに見えますが、そこには大きなリスクが潜んでおり、初心者はこのリスクに気づきにくいです。損切りを延命すると、最終的にどこかで限界がきて、資金が一気に失われます。
ナンピン・マーチンEAの落とし穴
ロットはどれだけ膨らむのか
初期ロット0.1で倍々に増やした場合の合計ロットと必要証拠金の目安です(ドル円150円、レバレッジ25倍、1ロット=10万通貨で計算)。
7段目でも必要証拠金は700万円を超えます。この証拠金に含み損が加わるので、数百万円の口座でも10段に達する前に強制ロスカットされます。
ナンピン・マーチンEAの正体は、勝率を極端に上げる代わりに、口座資金すべてを賭けるEAです。私も大きなリスクがあるため稼働はさせていませんでした。
何pips逆行すると口座が飛ぶのか
必要証拠金の表は、初期0.1ロットで段数を重ねた場合でした。では、よく推奨される0.01ロットから始めれば安全なのでしょうか。
条件をそろえて計算します。ドル円150円固定、初期0.01ロット(1,000通貨)、20pips逆行するごとに前回の2倍のロットで追加する設定です。0.01ロットなら1pipsの損益は10円です。
n段目を建てた時点の含み損は「200円×(2のn乗−n−1)」で求められます。10段目なら200×(1,024−11)=202,600円です。
右端の列を見ると、何段積んでも最後のエントリーから20pips弱戻れば全体が建値に戻ります。180pipsの逆行が、直近20pipsの戻りで帳消しになる計算です。反対に、戻らないまま進んだときの含み損は1段ごとにほぼ倍になります。
口座が飛ぶ位置は、口座資金・レバレッジ・ロスカット水準で決まります。100万円の口座で試算しました。新規注文は、建てたあとの証拠金維持率が100%を下回るなら通らない前提です。
同じ初期ロットなら、レバレッジが高い口座ほど早く飛びます。必要証拠金が小さいぶん段数を深く重ねられ、20ロットを超えたところで逆行を受けるためです。
段を重ねるほど含み損は倍々に
※ドル円150円固定・初期0.01ロット・20pips逆行ごとに2倍で追加した記事中の試算。棒はその段を建てた時点の含み損です。
国内の25倍では、8段目を建てるには証拠金が153万円必要になり、追加が止まります。1.27ロットのまま耐える形になるので飛ぶまでの幅は広がりますが、それでも資金の6割を失います。
何連敗で破綻するのか(単純マーチンの場合)
ナンピンを伴わない単純なマーチンゲールは、損切りと利確を同じ幅にして、負けるたびにロットを2倍にします。こちらは逆行幅ではなく連敗数で限界がきます。
1回目の損失を1,000円とすると、連敗ごとの累計損失と、次に必要なロットは次のとおりです。
10連敗なんて起きない、と思いたくなります。ところが勝率50%のトレードを1,000回繰り返すと、10連敗以上が1回以上起きる確率は約38%、8連敗以上なら約86%です(連敗の発生確率を漸化式で計算)。
勝率70%でも、1,000回のうちに5連敗以上が起きる確率は約82%あります。しかも10連敗後の注文は初回の1,024倍で、0.01ロット開始でも10.24ロットです。証拠金が足りず注文が通らなければ、そこで損失が確定します。
トレンド相場で一気に崩れる
ナンピン・マーチンEAが得意なのは、一定の幅を行き来するレンジ相場です。20pips逆行しても、その後20pips戻れば全ポジションが利益になります。
苦手なのは、一方向に進み続けるトレンド相場や、指標発表・要人発言による急変です。ドル円は2024年7月上旬の161円台から8月5日の141円台まで、約1か月で約20円下落しました。前の試算で口座が飛んだ約230pipsは、この下落幅の9分の1ほどにすぎません。
資金効率が悪い
トレードで必要な考え方の1つに「資金効率」があります。雑に言うと「1円投資していくら儲けられるか」です。
通常のEAとナンピンマーチンEAの資金効率
ナンピンマーチンは大きな含み損に耐えるために多くの資金が必要ですが、得られる利益は小さいため、資金効率の悪い投資です。
両建てEAならリスクは減る?
両建ては、同じ通貨ペアの買いと売りを同時に持つことです。たとえば150.00円で1ロット買ったあと149.00円まで下がり、そこで1ロット売ると、含み損10万円がその時点で固定されます。
その後いくら動いても損益は変わりません。損失が消えたわけではなく、確定を先送りしているだけです。
- コストが二重にかかる:買いと売りの両方でスプレッドを払う。スワップも、受け取る側より支払う側のほうが大きいことが多い
- 外すタイミングが難しい:片方を決済した瞬間から、再び相場の方向に賭ける状態に戻る
- 業者の禁止事項に触れることがある:同一口座内の両建ては認める業者が多い一方、複数口座間や他業者との両建てを禁止している海外業者は多い
EAの中には、ナンピンの含み損が膨らんだところで逆方向のポジションを建て、ロスカットを避けるロジックを持つものもあります。ロスカットは避けられても、固定した含み損は残り、コストは日々積み上がります。
ナンピン・マーチンEAはどう見分ける?
販売ページに「ナンピン」と書いていないEAでも、バックテストやフォワードの数字から見分けられます。
当サイトのランキング記事で取り上げたユーロエーンは、2026年9月時点のフォワードで勝率71%と見た目はよくても、収益率は−9.1%、最大ドローダウンは33.1%でした。1回の大きな負けで積み上げた利益が吹き飛ぶ、ナンピンの典型例です。
それでも稼働させる場合のリスク対策
ナンピン・マーチンEAを全否定はしません。上級者や資金管理を徹底できる方、リスクを理解して割り切れる方であれば、選択肢の1つにはなります。稼働させる場合は次のルールを守ってください。
最大ポジション数の決め方
最大ポジション数は、「資金の何割を失ったら止めるか」から逆算します。
条件は前の試算と同じ0.01ロット・20pips間隔・2倍です。n段まで建てたあと、さらに20pips逆行したときの損失は「200円×(2のn+1乗−n−2)」で求められます。
100万円の口座で損失を30万円までに抑えたい場合、8段なら100,400円、9段なら202,600円、10段なら407,200円です。上限は9段で、9段目からさらに20pips逆行したら損切りする設定です。
ただし、これは証拠金が足りる海外口座の場合です。国内の25倍では、前の試算どおり7段目で追加が止まります。
段数制限と最終損切りの設定がないEAでは、この逆算ができません。表の「段数制限型」を選ぶ理由はここにあります。
証拠金維持率とロスカット水準
証拠金維持率は「有効証拠金÷必要証拠金×100」で計算します。有効証拠金は、口座残高に含み損益を加えた額です。
ロスカットになる維持率は業者ごとに決まっています。国内業者は50〜100%、海外業者は20%以下に設定している例が多く、口座を開く前に確認が必要です。
国内25倍・100万円の試算では、7段目を建てた時点で必要証拠金76.2万円、含み損2.4万円、維持率は約128%でした。ロスカット水準50%の業者でも、そこから耐えられるのは残り約470pipsです。
最大段数まで建てた時点の維持率が、ロスカット水準の数倍残る資金を置いてください。足りなければ、資金を足すより先に初期ロットか段数を下げるほうが確実です。
資金管理とドローダウンの考え方は以下の記事で解説しています。
ナンピン・マーチンEAは、理解のある方が使えば武器になり、理解のない方が使えば口座を飛ばす道具になります。
初心者の方は、まずナンピン以外の優秀なEAから選んでください。
よくある質問
ナンピンマーチンEAは必ず破綻しますか?
必ずではありませんが、損切りしない設定なら、一方向の大きな逆行が来た時点で破綻します。初期0.01ロット・20pips間隔・2倍の設定では、100万円の口座でも約230pipsの逆行(レバレッジ1,000倍の場合)で資金の大半を失います。稼働期間が長いほど、その逆行に出会う確率は上がります。
ナンピンマーチンEAを動かすには資金がいくら必要ですか?
何段まで耐えたいかで決まります。0.01ロット・20pips間隔・2倍なら、n段目を建てた時点の含み損は200円×(2のn乗−n−1)です。10段目で約20万円、12段目で約82万円の含み損に、必要証拠金が加わります。
両建てにすればリスクは減りますか?
減りません。両建ては含み損を固定するだけで、損失は消えません。買いと売りの両方でスプレッドがかかり、スワップも支払いが受け取りを上回ることが多いため、持つほどコストが増えます。
勝率90%以上のEAはナンピン・マーチンですか?
その可能性は高いです。バックテストで、同じ方向の最大ポジション数が2以上か、最大ロットが初期ロットより大きく跳ねていないか、平均損失が平均利益の数倍になっていないかを確認してください。
証拠金維持率は何%あれば安全ですか?
安全といえる固定の数字はありません。最大段数まで建てた時点で、ロスカット水準の数倍の維持率が残る資金を置くのが目安です。国内25倍・100万円・7段の試算では維持率は約128%で、ロスカット水準50%までの残りは約470pipsでした。
段数制限型のナンピンEAなら安全ですか?
無限ナンピン型よりは、損失の上限を計算しやすくなります。ただし最終段で損切りしたときの損失は大きく、0.01ロット・9段で損切りすると約20万円です。損切りの位置は、口座資金の何割までなら失ってよいかで決めてください。
まとめ
- ナンピン・マーチンEAは損切りを延命して勝率を上げているだけで、資産曲線のきれいさはリスクの裏返し
- ロットは倍々に膨らみ、7段目で必要証拠金は700万円超。限界がくれば資金が一気に失われる
- 必要資金に対して利益が小さく、資金効率が悪い
- 稼働するなら専用口座・最小ロット・想定DDの2倍の資金・こまめな出金・複利禁止を徹底する
- 初心者はナンピン以外のEAから始める
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定のEA・金融商品の売買を推奨するものではありません。FX(外国為替証拠金取引)は元本が保証されておらず、レバレッジにより預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。記事内の成績・数値は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。





