勝率も期待値もプラスのEAなのに、口座のほうが先に尽きる。EAの破産は、ロジックの優劣よりも「1回の負けで資金の何%を失う設定か」で決まる部分が大きいです。
目安は、1トレードの損失を口座資金の1〜2%以内に収めることです。
たとえば勝率50%・ペイオフレシオ1.5のEAなら、バルサラの破産確率は1回のリスク2%でほぼ0%です。
同じEAでもリスクを10%にすると、約3.7%まで上がります(計算の前提は後半で説明します)。
ロットの計算式、破産確率表の読み方と前提、証拠金維持率とロスカット水準、複数EAを動かすときの資金配分まで、Pythonで計算した数値で確かめていきます。
EAの資金管理とは?破産確率を左右する理由
資金管理とは、1回のトレードで許容する損失額やロット数を決めることで、資金が大幅に減少するリスクを最小限にする方法です。
100万円の資金で1回のトレードに50万円を失えば、資金は半分です。元に戻すには、残りの50万円で100%の利益が必要です。
損失が大きいほど、回復に必要な利益率は急激に増えます。
だからこそ、大きな損失を1回でも出さないことが資金管理の目的です。
EAの資金管理で押さえる4つの基本
EAの資金管理で押さえる基本は、リスクとリワードの関係、ポジションサイジング、勝てるシステムでも負ける理由、ナンピンマーチンの危険性の4つです。
資金管理の4つの基本
リスクとリワードの関係
リスクとリワード(損失と利益)は切っても切れない関係です。大きな利益を狙えば大きなリスクが必要になり、ロットを大きくすれば利益も損失も大きくなります。どのくらい大きく利益を狙うかは、資金管理をしながら決める必要があります。
ポジションサイジングをしっかりする
ポジションサイジングとは、ルールに基づいてロットの枚数を決める方法です。口座資金の増え方・減り方が変わるため、適切な方法を選ばないと資金管理はうまくいきません。ただし、どんな手法にも合う最適なポジションサイジングはありません。
勝てるシステムでも負けることがある
資金管理を誤ると、勝てるシステムでも負けます。勝率50%、勝ったときの利益1万円、負けたときの損失8千円のシステムは、長期的に動かせば勝てるシステムです。ですが、資金が8千円しかなければ1回の負けでゲームオーバーです。
勝てるシステムでも破産する例
システムの成績
- 勝率50%
- 勝ったときの利益 1万円・負けたときの損失 8千円
- 長期的には勝てるシステム
資金が8千円しかない場合
- 1回の負けでゲームオーバー
- 資金管理ができていないための破産
期待値がプラスでも、1回の負けに耐えられる資金がなければ、勝ちが来る前に退場します。資金管理の不足による破産とは、このような状態です。
ナンピンマーチンは長期的に必ず破綻する
ナンピンマーチンは短期的には利益が出やすいものの、長期的に続けていると必ず破綻する手法です。実施する場合は期間を決め、出金をこまめにするなど特別なやり方が必要です。
EAのロット計算式|資金に比例させる定率管理
EAのロットを固定にするか、口座資金に比例させるか。この選択で、連敗したときの資金の減り方と、勝ったあとの増え方の両方が変わります。
EAによっては、ロットを固定する設定のほかに、残高に応じてロットを自動計算する設定を持つものもあります。どちらを使うにしても、1回の負けで失う金額が資金の何%になるかは自分で確認が必要です。
固定ロットのままEAを動かすと危ない理由
固定ロットでシステムを回し続けるのも、資金管理としては向いていません。
固定ロットの問題
資金に対して適切なロット数でトレードするのが正しい資金管理です。例外は、新しいEAを少額で様子見するときです。この段階なら、0.01ロットの固定ロットで動かしても問題ありません。
定率管理のロット計算式
資金管理にも色々な種類がありますが、基本的には逆マーチンゲール(勝って資金が増えたらロットを増やし、負けたら減らす)になる管理方法がオススメです。ロットは次の式で計算します。
枚数 = n(%)× 口座資金 ÷ 最大損失
例:口座資金100万円、n=2%、最大損失40pips(ドル円)
枚数 = 0.02 × 1,000,000 ÷ 0.4円 = 50,000通貨 = 0.5ロット
枚数の計算例(口座資金100万円・n=2・最大損失40pips)
「最大損失」はEAの損切り幅です。損切りのないEAや、ナンピンで複数ポジションを持つEAは、最大ドローダウン相当を最大損失として計算します。
※最大損失40pips(ドル円)で計算。EAの損切り幅が違えば比例して変わる。
1トレードのリスクは資金の何%まで?
初心者のうちや新しいEAを試す段階では、1回の損失が資金の1%以下になるロットに抑えます。
実運用でも勝てると確かめられたら、少しずつ許容損失を増やします。ただし、許容損失を増やすほど破産確率は高まります。
1%と2%の差は小さく見えます。ところが、同じ10連敗でも、毎回の損失を残高の一定割合にした場合の残り資金はこれだけ違います。
残高は(1 − リスク)の10乗で計算しています。リスク10%では10連敗で資金が3分の1近くまで減り、元に戻すには残高を約2.9倍(利益率約187%)に増やす必要があります。
10連敗したときの残高(毎回、残高の一定割合を失う)
10連敗後
※残高は(1 − リスク)の連敗回数乗で計算。開始時の残高を100%としています。
バルサラの破産確率とは?計算式と早見表
バルサラの破産確率とは、リスクにさらす資金の割合・勝率・ペイオフレシオ(平均利益÷平均損失)から破産する確率を求めたものです。求めた破産確率が0%になるロット設定が大事です。
破産確率を決める3つの要素と計算式
バルサラの破産確率は、ナウザー・バルサラ氏が1992年の著書で示したものとして知られています。書名は『Money Management Strategies for Futures Traders』です。
計算に使う数値は次の3つです。
- 勝率(p):勝ちトレードの割合
- ペイオフレシオ(k):平均利益 ÷ 平均損失
- リスク割合(r):1回の負けで失う金額 ÷ 口座資金
計算は、次の方程式を解いて x を求め、そこから破産確率を出す流れです。
この式は、次の4つを前提にしています。
- 毎回の損失額は一定(初期資金×r の定額)
- 勝ち負けは毎回独立で、勝率とペイオフレシオは変わらない
- トレードを無限に続ける
- 資金がゼロになった時点を破産とする
早見表:1回のリスク5%のときの破産確率
上の式で、リスク割合5%のときの破産確率をPythonで計算した結果です。0.00%は0.005%未満を表します。
100%が並ぶのは、期待値(勝率×ペイオフレシオ −(1−勝率))がゼロ以下の組み合わせです。勝率40%・ペイオフ1.5も期待値はちょうどゼロで、無限に続ければいつかは資金が尽きます。
リスクを2%に下げると、期待値がプラスの組み合わせはほぼすべて0.00%になります。この表の範囲で最も高いのは勝率30%・ペイオフ3.0の0.16%です。
EAに当てはめるときは、MT4のバックテストレポートから数値を拾います。勝率は「Profit trades (% of total)」(勝ちトレードの割合)、ペイオフレシオは「Average profit trade ÷ Average loss trade」(平均勝ちトレード÷平均負けトレード)の絶対値です。
勝率55%、平均勝ちトレード3,000円、平均負けトレード−2,500円のEAで考えてみます。ペイオフレシオは1.2、期待値は0.55×1.2−0.45=0.21でプラスです。
このEAの破産確率を同じ式で計算した結果が次の表です。
期待値がプラスのEAでも、リスク割合を上げるだけで破産確率ははっきり上がります。EA選びと同じくらい、ロットの設定が結果を左右するわけです。
定率ロットで資金が半分になる確率(シミュレーション)
下の表は、1回あたりのリスク割合を変えて1,000トレードした場合に、資金が一度でも半分以下になる確率を、Pythonのモンテカルロ法で計算した結果です(各5万回試行。毎回の損失は、その時点の残高×リスク割合の定率)。
- 同じ勝率・ペイオフでも、リスク割合を上げるだけで破産確率が跳ね上がる
- 勝率50%・ペイオフ1.0と勝率40%・ペイオフ1.5はどちらも期待値ゼロで、リスク10%では98%以上の確率で資金が半分になる
- 勝率60%・ペイオフ1.5のような優秀なシステムでも、リスク10%では約1.4%の確率で資金が半分になる
1回のトレードで一発退場になったり資産の数十%を失ったりする場合は、資金管理ができていないので、確率的に破産は必然です。
破産確率表を使うときの注意点
破産確率表の数値は、入力した勝率とペイオフレシオが将来も続くという仮定の上に立っています。EAに当てはめるときは、次の点で実際より楽観的な数字が出やすくなります。
- 勝率・ペイオフレシオはバックテストからの推定値で、相場環境が変われば下がることがある
- スプレッドやスリッページ、スワップのコストで実際のペイオフレシオは小さくなる
- バルサラの式は定額リスク・資金ゼロを破産とする前提で、実運用の「資金が半分になったら停止」とは基準が違う
- 相場の急変時は負けが続きやすく、毎回独立という前提が崩れることがある
そのため、表で0%に近い設定を選んだうえで、さらに1段階小さいリスクから始めるくらいでちょうどよい、というのが実務的な使い方です。
勝率50%でも連敗は起こる:連敗確率の目安
確率は思ったよりも残酷です。勝率50%の勝負で連敗する確率を見てみましょう。
勝率50%でも、ある時点から6回続けて負ける確率は1.6%あります。決して低い確率ではなく、スマホのガチャでレアが出るくらいの確率です。100回トレードすると、どこかで6連敗以上が起こる確率は約55%です(Pythonで計算)。
このとき資金の50%を賭けるトレードをしていたらどうなるでしょうか。0.5の6乗=0.0156なので、資金はあっという間に1/64になります。資金管理ができていない状態で確率50%の勝負をすると、ほぼ必ず破産します。

※バルサラの破産確率や資金管理の考え方は、MT4・MT5どちらのEAでも共通して適用できます。
証拠金維持率とロスカット水準はどう確認する?
ここまでのリスク割合は「損切りに引っかかったらいくら負けるか」の話でした。もう一つ、口座そのものが強制的に閉じられる水準として、証拠金維持率とロスカットがあります。
証拠金維持率は「有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100」で求めます。含み損が増えると有効証拠金が減って維持率が下がり、業者が決めたロスカット水準を割るとポジションが強制決済されます。
損切り幅が決まっている単ポジションのEAなら、多くの場合は損切りのほうが先に来ます。一方、損切りのないEAやナンピンでポジションを積み増すEA、複数のEAを同時に動かす口座では、ロスカットが先に来ることがあります。
ロスカット水準は業者や口座タイプによって異なります。運用する口座の水準を確認し、最大ドローダウンを受けても維持率がその水準に届かないロットに抑えることが前提です。
数字で確かめてみます。口座資金100万円、ドル円150円(計算用の仮定)、国内の個人口座のレバレッジ上限25倍(必要証拠金は取引額の4%)とします。
0.5ロットで損切り40pipsなら、ロスカットより2万円の損切りがはるかに先に来ます。ところが、同じ口座で0.5ロットのEAを3本同時に建てると、約67pipsの逆行で維持率100%に届きます。ロスカット水準が100%の口座なら、損切りに届く前に口座全体が強制決済されかねません。
複数のEAを動かすとき資金はどう配分する?
EAを1本ずつ見ればリスク2%でも、同じ口座で3本を同時に動かせば、同時に負けたときの損失は最大で6%です。複数運用では、EAごとではなく口座全体でリスクを数えます。
- 同じ通貨ペアや、ユーロドルとポンドドルのように値動きが似た通貨ペアのEAは、1つのリスクとして合算する
- 口座全体で同時に取るリスクの上限を先に決め、EAの本数で割って1本あたりの配分を決める
- EAごとの配分は、損切り幅だけでなくバックテストの最大ドローダウンも基準にする
配分の計算例です。口座資金300万円で3本のEAを動かし、口座全体で許容するドローダウンを20%(60万円)、1本あたり20万円とします。実運用のドローダウンはバックテストの2倍まで膨らむ前提で、ロットを割り戻します。
ロットは「20万円 ÷ 見積もりDD × 0.1ロット」で求め、端数は切り捨てています。2倍という係数は本記事で置いた安全側の仮定で、決まった基準ではありません。ドローダウンの大きいEAほどロットが小さくなり、1本の不調で口座全体が傷むのを防げます。
EAの資金管理と破産確率のよくある質問
EAの破産確率はどうやって計算する?
勝率p、ペイオフレシオk、1回のリスク割合rを使い、p×x^(k+1) − x + (1 − p) = 0 を0と1の間で解いて、x^(1/r) を破産確率とします。これがバルサラの破産確率の計算方法です。期待値がゼロ以下なら破産確率は100%になります。
1トレードのリスクは資金の何%が目安?
1〜2%が目安で、初心者や新しいEAの検証中は1%以下に抑えます。期待値がプラスのEAでもリスクを上げると破産確率は上がり、勝率55%・ペイオフレシオ1.2の例ではリスク2%でほぼゼロ、10%で約3.0%でした。
破産確率が0%なら絶対に破産しない?
いいえ。破産確率表は、勝率とペイオフレシオが将来も変わらず、勝ち負けが毎回独立という前提の理論値です。相場環境の変化やスプレッド等のコスト、連敗の偏りがあると実際の危険はもっと大きくなるため、表で0%に近い設定よりさらに一段小さいリスクから始めます。
証拠金維持率はどのくらいを保てばいい?
ロスカット水準は業者や口座タイプで異なるため、一律の正解はありません。最大ドローダウン分の含み損を抱えても維持率がロスカット水準を上回るロットに抑えるのが基準です。口座資金100万円・ドル円150円・レバレッジ25倍で0.5ロットなら、維持率は約333%です。
複数のEAを同時に動かすときのロットはどう決める?
口座全体で許容するリスクやドローダウンの上限を先に決め、EAの本数で割って1本あたりの配分を決めます。同じ通貨ペアや値動きの似た通貨ペアのEAは1つのリスクとして合算し、ロットはバックテストの最大ドローダウンを安全側に見積もって割り戻します。
ナンピンやマーチンゲールのEAにも破産確率の計算は使える?
そのままでは使えません。損切りがなく1回の損失額が一定にならないためです。最大ドローダウン相当を最大損失として扱い、その含み損を抱えても証拠金維持率がロスカット水準に届かないかで確認します。
まとめ
- 資金管理をしないと破産確率が上がる。損失が大きいほど回復に必要な利益率は急増する
- 固定ロットは資金の増減に対応できない。少額の様子見を除き、ポジションサイジングをする
- ロットは「n% × 口座資金 ÷ 最大損失」で計算する
- 最初は1トレードの最大損失を資金の1%以下にし、実績が出たら徐々に増やす
- 慣れてきたらバルサラの破産確率を見て、破産確率が上がらない範囲でリスクを増やす
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定のEA・金融商品の売買を推奨するものではありません。FX(外国為替証拠金取引)は元本が保証されておらず、レバレッジにより預けた証拠金を上回る損失が発生する可能性があります。記事内の成績・数値は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。





