EAを何本も動かしているのに、同じ日にそろって負ける。原因の多くは、EA同士の値動きが似ている(相関が高い)ことです。同じ種類のEAばかりだと、同じレートで同じ方向のポジションを持ってしまいます。
ポートフォリオは、(1)相関係数で組み合わせを選び、(2)通貨ペア・時間軸・ロジックで分散し、(3)最大ドローダウンを基準に資金を配分する、の順で組みます。
本記事の試算では、月平均+3万円のEAを2本組んだとき、合成ドローダウンは相関0.8で約70万円、相関0.2で約50万円でした。利益は同じでも、耐えるべき資金の落ち込みが約20万円変わります。
この記事でわかること
- EA同士の相関係数の目安(0.7以上・0.3未満)と対応
- 相関0.8と0.2で合成ドローダウンがどれだけ変わるかの試算
- 通貨ペア・時間軸・ロジックで分散させる軸
- 300万円・3本のEAの資金配分とロットの計算例
- EAの本数と見直しの頻度の目安
EAのポートフォリオとは?
EAのポートフォリオとは、口座で稼働させているEAの組み合わせのことです。値動きの異なるEAを組み合わせて、口座全体のドローダウンを抑えるために組みます。下の図がポートフォリオの例です。
ポートフォリオを組む目的
目的はリスク分散です。1つのEAだけだと、そのEAが不調になったときに資産が減り続けます。1つが負け続きでも他のEAが勝てれば資産が減らずに済みます。お互いの苦手な相場を補い合えれば、リスクを減らして運用できます。
1つのEAと複数EAの違い
ポートフォリオを組むためのツール
QuantAnalyzerを使うと、複数のEAのバックテストを合成して資産曲線・ドローダウン・相関を確認できます。ポートフォリオを組むときの必須ツールです。無料版もあり、組み合わせを自動で探すPortfolio Masterは無料版だと4本までに制限されています(2026年9月時点、StrategyQuant公式サイト)。
EAポートフォリオの組み方5ステップ
組む手順は5段階です。いきなり実弾で本数を増やさず、候補を集めて相関を確かめ、ロットを決めてから0.01ロットで動かします。
ポートフォリオの組み方
EAの組み合わせを選ぶ3つの基準
稼働するEAを選ぶだけでなく、パラメータやロットも考慮すると何パターンもの組み合わせが考えられます。選ぶときのアプローチは3つです。
最大ドローダウンを増やさないように組む
各EAのバックテストを合成したときに、最大ドローダウンが増えないように組む方法です。最大ドローダウンを増やさずに獲得利益を増やせれば、リスクを抑えたまま収益を伸ばせます。

赤い部分がドローダウンで、最大ドローダウンが1,300pips程度あることがわかります。この最大ドローダウンを増やさず、かつ途中の細かいドローダウンもあまりないポートフォリオを組めればベストです。
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EAの最大ドローダウンとは?相対ドローダウンとの違いと目安EAの最大ドローダウンは、資産がピークから最も大きく減った金額です。相対・絶対ドローダウンとの違い、MT4レポートでの見方、必要資金を逆算する計算例、リカバリーファクターとの関係まで解説します。
相関係数が低いEAを組み合わせる
各EAの損益・ポジション数・エントリー/クローズポイントの相関性が低くなるように組む方法です。1日のうちに2つのEAの損失が被る頻度が多いなら、その2つは相関性が高く、同時に損失を出すことが多いのでリスクが高くなります。
表の0.7・0.3という区切りは本記事の目安で、QuantAnalyzerの公式ドキュメントに「いくつ以下なら相関が低い」という基準はありません。QuantAnalyzerで相関係数を出す操作手順はQuantAnalyzerで相関係数を調べる方法で紹介しています。
相関0.8と0.2で合成ドローダウンはどう変わるか(試算)
相関係数の差は、実際のドローダウンにどれだけ効くのか。2本のEAで試算します。
前提は、どちらのEAも月平均+3万円、月ごとの損益のばらつき(標準偏差)が10万円というものです。2本の利益の合計は、相関に関係なく月6万円です。
2本を合わせた月ごとのばらつきは、√(σ1² + σ2² + 2 × ρ × σ1 × σ2) で決まります。σ1・σ2は各EAのばらつき、ρは相関係数です。
相関0.8では、2本に分けてもばらつきは単純合計の95%までしか下がりません。分散したつもりでも、1本のEAを2倍のロットで動かしているのとほとんど変わらない状態です。
相関係数で2本の合成ばらつきはどう変わる?
単純合計(10万円+10万円)
20.0万円
2本を合成したばらつき(月)
15.5万円(単純合計の77%)
相関0.2なら単純合計の77%まで下がる。利益は月6万円のまま。
※どちらも月平均+3万円・ばらつき(標準偏差)10万円とした記事中の試算です。
最大ドローダウンでも確かめました。同じ前提で、60か月(5年)分の月次損益を正規分布の乱数で1万回つくりました。合成した資産曲線の最大ドローダウンを、中央値で比べています(PythonとNumPyによる本記事の試算)。
1本だけのときの最大ドローダウンの中央値は約38万円でした。相関0.8の2本はその約1.8倍、相関0.2なら約1.3倍です。利益はどちらも同じなので、相関を下げた分だけ耐える資金の落ち込みが減ります。
実際のEAの損益は正規分布どおりにならず、連敗が偏ると最大ドローダウンは試算より大きくなります。数字は相関の効き方を比べるための目安です。
平均利益、平均損失、取引頻度を考慮する
EAによって獲得するpipsや取引頻度は違います。週1トレードで50pips取るEAと、1日20pips取るEAを同じロットで組むと、利益は後者の良し悪しに偏ります。
取引頻度・TP・SLが違うEAのロット調整
前者のEA
- 利益:50pips(週1トレード)
- ストップロス:100pips
- ロット3倍で損失の割合が後者と同じになる
後者のEA
- 利益:20pips × 5日間 = 100pips
- 損失:60pips × 5日間 = 300pips
利益だけ見ると前者を2倍にすれば揃いますが、損失も考慮すると3倍が必要です。EAによって取引頻度・TP・SLが違うので、ロットでバランスを調整します。
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EAのロット数の決め方|リスク1%・最大DD・複利を計算例で解説EAのロット数は「口座残高×リスク%÷(損切り幅×1pipsの価値)」で決めます。リスク1%と最大DDからの計算例に加え、MT4でEAのロットを変更する手順、固定ロットと複利の切替、変更が反映されないときの確認点も解説します。
通貨ペア・時間軸・ロジックでEAを分散させる
同じ種類のEAを稼働しているとエントリーが被ってリスクが増大します。EAの種類を把握してポートフォリオの候補を考えましょう。分散の軸は次の4つです。
通貨ペアの重複は、見た目より深く入り込みます。ユーロ円のレートは「ユーロドル × ドル円」で決まるため、ドル円の買いとユーロドルの買いを同時に持つと、値動きの方向はユーロ円の買いとほぼ同じになります。ここにユーロ円のEAを足すと、同じリスクを2重に抱えることになります。
ポジションを持つ時間の長さによる分類
ポジションの保有時間による分類
スキャル
- 数秒〜数分で完結
- 1回の利益は小さく、取引頻度が多い
デイトレ
- 当日中の数時間で完結
スイング
- 数日〜数週間ポジションを保有
- 1トレードの利益と損失が大きく、取引頻度は少なめ
トレードタイプによる分類
トレードタイプによる8つの分類
高勝率型スキャル
- 負けが少なく資産曲線がきれいに見える人気タイプ
朝スキャ
- アジア時間早朝のレンジ相場を狙う
ブレイク
- 高値・安値を抜けた値動きを狙う
トレンドフォロー
- トレンドと同じ方向にポジションを持つ
ナンピン・マーチン
- 逆行時にポジションを追加する(リスク大)
グリッド・リピート
- 等間隔の価格でポジションを持つ
アノマリー
- 根拠のない規則性を狙う(仲値EAが人気)
特定の相場を狙う
- 窓埋めや時間帯限定。他のEAと被りにくい


各タイプの詳細は以下の記事で解説しています。
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EAの種類が被ったときのロット調整
同じ種類のEAが被ったら、ロットを落とします。例えば朝スキャEAを0.1ロットで稼働する予定だったが2つ被った場合は、それぞれ半分の0.05ロットにします。
相関性が低いポートフォリオを組んでも、ポジションが被らない保証はありません。EAが増えるほどポジションが被る可能性は高まり、1回のトレードで多くの金額を失う可能性も高まります。
併せて読むEAの資金配分はどう決める?300万円・3本の例
組み合わせが決まっても、ロットを均等にすると最大ドローダウンの大きいEAに口座全体が振り回されます。配分の基準は利益ではなく、各EAの最大ドローダウンです。
口座資金300万円で3本のEAを動かす例で考えます。口座全体で許容するドローダウンを20%(60万円)とし、1本あたり20万円に割り振ります。実運用のドローダウンはバックテストの2倍まで膨らむ前提でロットを割り戻します。
ロットは「20万円 ÷ 見積もりDD × 0.1ロット」で求め、端数は切り捨てています。2倍という係数は安全側に置いた仮定で、決まった基準ではありません。
3本が同時にそれぞれの見積もりDDまで落ち込んでも、損失は合計60万円以内です。口座全体で決めた許容ドローダウン20%に収まります。
相関が高い2本は、1本分の枠を分け合います。たとえばAとBの相関が0.7以上なら、2本で20万円の枠とし、1本10万円で計算し直します。Aは10万円÷30万円×0.1=0.033で0.03ロット、Bは10万円÷60万円×0.1=約0.017で0.01ロットです。
1トレードのリスクや破産確率からロットを決める方法はEAの資金管理と破産確率で解説しています。
EAは何本組めばいい?本数と見直しの目安
本数は多いほど安全、とは限りません。EAが増えるほど同じ時間にポジションが重なりやすくなり、1本ずつの成績も追いにくくなります。
EAをいつ止めるべきか?5つの稼働停止ルールで安心の判断基準を確立EAの稼働停止タイミングを5つのルールで判断。月利益・年利益・最大ドローダウンなど具体的な判断基準で不調EAの見極めができます。
EAポートフォリオの組み方でよくある質問
EAのポートフォリオを組むときに迷いやすい点をまとめました。本数、相関係数の目安、資金配分の3つは、特に質問の多いところです。数字の根拠は各見出しの試算と表もあわせて確認してください。
EAのポートフォリオは何本から組めばいい?
3〜5本から始めるのが目安です。本数を増やすほど同じ時間にポジションが重なりやすくなり、1本ずつの成績も追いにくくなります。まずは種類の違うEAを3本組み、相関とドローダウンを確かめてから増やします。
EA同士の相関係数はいくつ以下なら組み合わせていい?
本記事では0.3未満を積極的に組み合わせる目安にしています。0.7以上の2本は値動きがほぼ同じなので、どちらか1本にするか、2本で1本分のロットに抑えます。試算では、相関0.8の2本は合成したばらつきが単純合計の95%までしか下がりませんでした。
同じ通貨ペアのEAを2本動かしてもいい?
動かせますが、同じ方向のポジションが重なる前提でロットを合計して考えます。ロジックや取引時間帯が違っても、同じ通貨ペアは相場の急変で同時に損失が出やすいためです。ドル円とユーロドルの買いを同時に持つと、ユーロ円の買いに近い値動きになる点にも注意します。
無料EAだけでポートフォリオは組める?
組めます。無料か有料かに関係なく、バックテストとフォワードの成績で相関と最大ドローダウンを確かめる手順は同じです。QuantAnalyzerでバックテストを合成し、最大ドローダウンが増えない組み合わせを選びます。
EAの資金配分はどう決める?
各EAの最大ドローダウンを基準に決めます。口座資金300万円・3本・許容ドローダウン20%なら1本あたり20万円とし、実運用のドローダウンをバックテストの2倍と見積もってロットを割り戻します。相関0.7以上の2本は1本分の枠を分け合います。
相関の低いEAを組めば大きな損失は出ない?
いいえ。相関係数は過去の傾向で、相場が急変するとそろって負けることがあります。試算でも、相関0.2の2本で合成した最大ドローダウンの中央値は約50万円でした。ロットは最悪の状態を前提に決めます。
ポートフォリオはどのくらいの頻度で見直す?
月1回が目安です。各EAの成績と相関の変化を確認し、バックテストの最大ドローダウンを超えたEAは停止を検討します。入れ替えたときは、新しい組み合わせで合成結果を確かめ直します。
まとめ
- ポートフォリオの目的はリスク分散。1つが不調でも他が補い、合成した資産曲線がなだらかになる
- 組む基準は「最大DDを増やさない」「相関を低く」「TP・SL・頻度でロットを調整」の3つ
- 通貨ペア・保有時間・ロジック・時間帯の4軸で種類を分散する
- 資金は最大ドローダウンを基準に配分する。相関0.7以上の2本は1本分の枠を分け合う
- 種類が被ったらロットを落とす。EAは3〜5個から始め、月1回見直す





