EAを稼働させる前にトレードの基礎知識として知っておきたい期待値について説明します。
期待値がプラスにならないトレードを行うことはただ資産を減らすだけのトレードになってしまうため、しっかりと期待値についての理解を深めることをオススメします。
期待値とは
期待値とはGoogleで調べてみると、
統計学で、確率の見地から算定した平均値。
と記載されています。
これだけだとなんだかよくわらないと思います。
簡単に説明すると、ある確率に基づいた行動1回あたりにどのくらいの数値が期待できるかを示した値のことです。
例えばコインを投げて表が出たら100円獲得、裏が出たら10円を失うゲームの期待値が45円と言われたら、このゲームをやると1回あたり45円の利益が期待できるということになります。
1回あたり45円プラスになるのでこのゲームを続けると利益が増えていくのでやればやるだけお得なゲームであると判断することができるわけです。
逆に期待値がマイナスになると続ければ続けるだけ損をするゲームということになります。期待値がマイナスになるゲームとして有名なものがパチンコ、競馬、宝くじです。これらのゲームをやる人はバカだと言われる所以は期待値にあります。
実際にEAのバックテストを Quant analyzer に取り込んで期待値を確認してみましょう。 EXPECTANCY が期待値のことです。

期待値の計算方法
トレードの期待値は以下の計算式で計算することができます。
「期待値 = 勝率 × 利益 + 敗率 × 損失」
例えば、勝率60%、利確10pips、損失20pipsのトレードをしていたとします。
トレードの期待値は
「10pis × 0.6 + (-20pips) × 0.4 = -2pips」
です。このトレードを繰り返すと一回あたり2pipsを失うことになり資金は減っていきます。
期待値の検証
期待値がマイナスのトレード検証
実際に上記期待値でトレードを1000回行ったシミュレーション結果が以下です。資金がどんどん減っていっているのがわかります。最後には約-2500pipsの損失になっています。

期待値がプラスのトレード検証
では勝率40%、利確10pips、損失5pipsのトレードをしていたとします。
トレードの期待値は
「10pis × 0.4 + (-5pips) × 0.6 = 1pips」
なので、1回のトレードで1pipsを得られるので、資金が増やせるトレードだとわかります。
実際にこの条件でシミュレーショントレードを1000回行った結果が以下です。

資金がどんどん増えていっているのがわかります。最後には約800pipsの利益になっています。
結論トレードは期待値がすべて
上記のシミュレーション結果からわかるようにトレードは期待値で将来の利益、損失が決まります。
この先トレードを何回も繰り返していくことになりますが、1回、1回のトレードで落ち込んだり、喜んだりすることよりもトレードの期待値をしっかりと確認して、将来プラスになるのかマイナスになるのかを判断することが大切です。
トレードというのは勝ち負けを繰り返し、期待値どおりにお金が変化していくだけのゲームでしかないのです。
そのためには感情を捨てるトレードをしなければなりません。
まず自分が行っているトレードはどのように資金が増えていくのかを理解する必要があります。
ここまでの説明がまず通常の期待値の説明です。
タープの期待値とは?
ここからはちょっと上級編です。
Quant analyzerでEAのバックテストを取り込むとR EXPECTANCY(タープの期待値)という評価値が存在します。タープの期待値とは通常の期待値とは何が違うのか?これからお話しします。
タープの期待値とはタープ博士が考案した期待値です。
計算式は下の通りです。
タープの期待値=(勝率 × 利益 + 敗率 × 損失)÷ (-損失)
タープの期待値は0.1を上回ることが望ましいとされています。
ちなみにQuant analyzerでは以下の値がタープの期待値を指しています。

普通の期待値の問題点は?
タープの期待値の詳細を知る前にはまず最初に説明した通常の期待値から確認していきます。
まず普通の期待値の求め方は下の式でしたね。
「期待値 = 勝率 × 利益 + 敗率 × 損失」
普通に考えると期待値の値がプラスになれば利益を出せるシステムな訳です。そして期待値は1回のトレードで期待できる利益を表しています。
では期待値だけでシステムを評価する問題点とは何か?というと、リスクが考慮されていない点です。
例として下記それぞれ普通の期待値とタープの期待値を計算してみます。
Aのシステム
1回の勝ちトレードで100円を得る、負けトレードで200円を失うトレードで勝率80%の場合
Aのシステムの期待値=100円×0.8+(-200円)×0.2=40円
Aのシステムのタープの期待値=40/200=0.2
Bのシステム
1回の勝ちトレードで100円を得る、負けトレードで200円を失うトレードで勝率88%
Bのシステムの期待値=100円×0.88+(-400円)×0.12=40円
Bのシステムのタープの期待値=40/400=0.1
上記の計算結果からわかるようにAのシステムとBのシステムは期待値が同じでも、タープの期待値は別の値になりました。
タープの期待値の意味するところ
タープの期待値の意味するところはリスクに晒した金額につき、どれくらい利益が得られるかを示しています。先程の例で言うと1円をリスクに晒した時にいくらの利益が期待できるかを示しています。
タープの期待値を見るとBのシステムはAのシステムよりリスクが大きく利益効率が悪いということが分かります。タープの期待値だけを見るとBよりもAを稼働するべきということがわかります。
ここまででおわかりいただけたと思いますが、タープの期待値はとても重要な指標です。いくら期待値が大きくてもリスクが大きすぎたら意味がないとということがわかります。例えば、10円を得るために100万円のリスクを取っていたら話になりません。
タープの期待値が小さすぎるシステムを使っている場合はそのシステムを稼働する意味はあるのかもう一度考えてみるきっかけにもなるかと思います。
ちなみにタープの期待値について私は下記の書籍から学びました。もっと詳細を学びたい方は買っておいて損はありません。
タープの期待値の弱点
タープの期待値に限りませんが、もちろん弱点はあります。
過剰最適化されたバックテストの値を見ても意味がないことです。
また、複数ポジションを持つEAの場合、正しい値が得られない可能性がありますので、比較する場合は1ポジションのEA同士の値を比較することを推奨します。
まとめ
期待値を知ることで今行っているトレードが将来、利益になるのか損失になるのかを確認することができます。通常の期待値になれてきたら次のステップとしてタープの期待値も気にしてみましょう。
通常の期待値とタープの期待値をまとめると以下の通りとなります。
通常の期待値 =1トレードあたりに期待できる利益
タープの期待値 =1円をリスクにさらした時に得られる利益
単純な期待値を見るよりもタープの期待値を見ることが大事です。
タープの期待値が小さいシステムを稼働している場合は一度見直してみましょう。