今回は「科学的根拠に基づく最高の勉強法」という書籍から得た知見をもとに、ITエンジニアが技術習得に活用できる学習法について解説します。この書籍には、さまざまな学習方法の効果を検証した実験結果が数多く掲載されています。エビデンスに基づいた学習法を取り入れることで、プログラミングスキルをより効率的に身につけられるでしょう。
アクティブリコールでプログラミング構文を定着させる
知識の定着に有効な手法として「アクティブリコール」があります。アクティブリコールは、知識を一旦思い出してから確認することで記憶を強化する学習法です。以下の手順でIT用語やプログラミング構文を学習してみましょう。
- 教科書やウェブサイトで学んだ概念を読み込む。
- 少し時間を置いて(約1分程度)、記憶した内容を頭から一旦追い出す。
- 覚えた内容を思い出し、手元のメモに書き出す。
- 書いた内容を元のテキストと照合し、間違いを修正する。
このプロセスを繰り返すことで、IT知識が効率よく定着していきます。単に内容を見返すよりも、アクティブに思い出そうとすることで記憶が強化されます。
インターリービングで関連技術を横断的に学ぶ
次に「インターリービング」という学習手法です。インターリービングは、異なるトピックを交互に学ぶ方法で、複数の関連技術を習得する際に特に有効とされています。ここでは、フロントエンド開発を例に考えてみましょう。
例えば、ReactのJSX構文を学んだらCSSのスタイリングに移り、次にコンポーネント設計を学ぶ、というように関連する要素を交互に学習します。この方法により、各要素が複雑に組み合わされている実際の開発環境でスムーズに対応できるとされています。単一のスキルに集中するのではなく、関連性のある複数のスキルを横断的に学ぶことで理解が深まります。
イメージ変換やストーリー法の限界と本質的理解の重要性
プログラミング分野では、イメージ変換やストーリー法といった一般的な記憶術が必ずしも効果的とは限りません。アルゴリズムやデータ構造の理解には、暗記よりも理論の追求が求められます。
たとえば、データ構造の利点・欠点をただ覚えるのではなく、それぞれの構造が適用される問題の種類や解決方法の理論を理解することが重要です。論理的なつながりを重視することで、応用力が養われるでしょう。
代理体験で自己効力感を高める
学習意欲やモチベーションを維持するには、「代理体験」が効果的です。代理体験は、上級者の行動や思考に触れることで「自分にもできそうだ」と感じることを促します。
たとえば、以下のような方法で代理体験を積むことが可能です。
- 上級エンジニアによるレビューを見学
- コードレビューの場でどのような点に注意を払っているか学ぶ。
- エンジニアのブログを読む
- 第一線で活躍するエンジニアの経験や思考を知り、自分にも応用可能だと感じられる。
代理体験を通じて、「自分もできる」という実感を持てるようになり、前向きな学習姿勢が養われます。
睡眠と運動で脳をリフレッシュ
プログラミングには高い集中力が必要で、睡眠と運動も重要です。例えば、就寝前にプログラミングを学習すると、良質な睡眠がその記憶を定着させることが研究で示されています。さらに、適度な運動を取り入れることで、認知機能が高まります。
このような生活リズムを意識することで、プログラミングの学習効率を高めることができます。
初学者への指導
最後に、初心者にプログラミングを教える際のポイントです。エキスパートが初心者に指導する際、答えをすぐに教えるのではなく、適切なヒントを与えながら考えさせることが効果的です。
この指導法により、学習者はアクティブリコールを行うことができ、知識の定着が促進されます。エキスパートが手取り足取り教えると、学習者は受動的になり、結果的に定着率が下がってしまう可能性があるため、工夫が必要です。
まとめ
「科学的根拠に基づく最高の勉強法」から、ITエンジニアの技術習得に活かせるいくつかの学習法を紹介しました。アクティブリコール、インターリービング、代理体験、生活リズムの最適化など、これらはすべて科学的なエビデンスに基づいています。少しの手間をかけて取り組むことで、技術習得の効率を大幅に向上させることができるでしょう。
エンジニアの皆さんも、この学習法を試し、自分に合った方法を見つけることでスキルアップを図ってみてください。